ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップ 古代吉備を掘ること40年 調査員こぼれ話 > コラム一覧 > 埋蔵文化財の情報をお知らせ!「岡山県文化財情報システム」ができるまで

本文

埋蔵文化財の情報をお知らせ!「岡山県文化財情報システム」ができるまで

更新日:2025年5月26日更新

文/岡山県古代吉備文化財センター  和田 剛

はじめに

 今回は、Webサイト「岡山県文化財情報システム」ができるまでの経緯についてお話します。「岡山県文化財情報システム」は埋蔵文化財―遺跡や遺物など地面に埋もれている文化財―についての情報を県民の皆さんに公開するものです。併せてシステム公開に先立って実施した分布調査の際の、担当職員の奮闘(?)ぶりについてもご紹介します

岡山県文化財情報システム
「岡山県文化財情報システム(埋蔵文化財)」の画面

「岡山県文化財情報システム」と「周知の埋蔵文化財包蔵地」

 では、なぜ岡山県は埋蔵文化財の情報を公開しているのでしょうか。それは埋蔵文化財の場所や内容などについて「広く知らせる」ためです。
 埋蔵文化財ついて「広く知らせる」ことは「文化財保護法」という法律と関係があります。
 この法律の第95条は岡山県など地方公共団体に「周知の埋蔵文化財包蔵地」に関する情報の周知を要請しています。「周知の埋蔵文化財包蔵地」とは第93条に「貝づか、古墳その他埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地」と定義されています。つまり私たちが遺跡と呼んでいるものにほかならないのです。(以下、「周知の埋蔵文化財包蔵地」のことを、遺跡と呼びます。)
 遺跡の中で土木工事など開発行為を行う際に、その現状保存が望ましいのですが、それが困難である場合には、立会調査や記録保存のための発掘調査を行うことがあります。つまり、開発行為から遺跡を守るためには、その対象となる遺跡の位置や内容が事前に広く知らされていなければならないのです。
 そして、岡山県が遺跡について広く知らせるために運用している仕組みが、「岡山県文化財情報システム」なのです。

「岡山県文化財情報システム」が公開される以前​

 「岡山県文化財情報システム」が公開される以前、埋蔵文化財に関する情報は本の形で提供されていました。この本が平成15(2003)年に公刊された「改訂 岡山県遺跡地図」です。
「改訂 岡山県遺跡地図」の写真
「改訂 岡山県遺跡地図」

 この「改訂 岡山県遺跡地図」はそれまでの「岡山県遺跡地名表」や「岡山県遺跡地図」を更新するものです。当時、大規模開発事業や新規発見の遺跡が増加しており、これらに対応するため新たな遺跡地図が公刊されることになりました。

 公刊に先立って平成10(1998)~14(2002)年度まで、県内全域で分布調査を実施しました。分布調査とは遺跡の有無を調べるために行う実地踏査のことです。

 この分布調査は岡山県教育委員会の職員だけでなく、各市町村の文化財担当職員や県内の考古学研究者の方々も参加しました。まさに全県を挙げての大事業たったのです。​
分布調査の様子

分布調査の様子

 各遺跡を踏査した際には、遺跡の状況や遺物が落ちていないかを確認します。そして踏査の結果を埋蔵文化財包蔵地調査カードに記載します。これらのデータをまとめて編冊したものが「改訂 岡山県遺跡地図」となったのです。

埋蔵文化財包蔵調査カードの写真
埋蔵文化財包蔵調査カード

 かくいう私も、この分布調査に2か年にわたって参加しました。

 ところで、私にはこの分布調査に関して苦い思い出があります。旧加茂町内(現津山市)で調査していた際のことです。ある谷の奥に製鉄遺跡があるとの事前情報をつかんでいました。

 現地は狭い谷底低地で、谷の奥を目指して歩きました。やがて道はなくなり、そこからは河川敷へ降りて歩き回りました。そのかいあってか鉄滓を見つけることができ、大喜びでした。

 その日の成果を集合場所に戻って報告をすると、先輩職員から「それで、川の上流は見たの?」と質問が。そう言われて、顔から血の気が引いたのを覚えています。当たり前なのですが、河川敷に製鉄遺跡があるわけがありません。私が見つけた鉄滓は川の上流から流されてきたものだったのでしょう。川の上流にこそ製鉄遺跡が存在する可能性があったのです。

 当時、私は入庁したばかりでした。分布調査は当時の私のような新米職員が遺跡を見る目を養う、訓練の場でもあったのだと思います。

「岡山県文化財情報システム」の公開

 「改訂 岡山県遺跡地図」刊行の1年前にあたる平成14(2002)年、岡山県は「岡山県全県統合型GIS」を公開することを計画しました。「岡山県全県統合型GIS」はインターネット上で様々な情報を県民の皆さんに提供するものです。

 同じころ、岡山県古代吉備文化財センターではこれまでの本の形の遺跡地図に代わり、インターネット上で埋蔵文化財の情報を提供するシステムの公開を予定していました。

 しかし、こうした岡山県の動静を鑑み、「岡山県全県統合型GIS」上に統合する形で埋蔵文化財に関する情報を提供することを決定します。こうして平成17(2005)年に「岡山県文化財情報システム」の運用が開始されたのです。

 以後、何度かのシステム更新を挟みつつ、新規に発見された遺跡や新たに刊行された発掘調査報告書などについての情報を定期的に更新しています。

 おわりに

 ここまで、「岡山県文化財情報システム」についてお話してきました。最初にお話しした通り、このシステムは岡山県内の埋蔵文化財についての情報を公開するための仕組みです。ですから、皆さんにぜひアクセスしていただいて、県内の埋蔵文化財について知っていただければ、大変うれしく思います。

 「岡山県文化財情報システム」は以下のページで公開されています。ぜひご利用ください!

 

<パソコン版はこちらから>
http://www.gis.pref.okayama.jp/pref-okayama/Portal

<スマホ版はこちらから>
http://www.gis.pref.okayama.jp/okayama-sp/

<「岡山県文化財情報システム」の使い方はこちらをご覧ください>
「岡山県文化財情報システム」の使い方 [PDFファイル/574KB]

 

Adobe Reader
PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe社が提供するAdobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。(無料)