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「新たな発掘調査の方法への取り組み ―ドローン・フォトグラメトリ・微地形図―」

更新日:2026年3月3日更新

文/岡山県古代吉備文化財センター  四田寛人

 ドローンによる空撮、フォトグラメトリ(いわゆるSfM)・LiDARを用いた三次元計測など、デジタル技術を用いた記録方法は、全国各地で行われている遺跡の発掘調査現場で既に日常的なものとなっています。このコラムでは、センターで取り組んでいる新たな発掘調査や遺跡の探査、普及啓発の方法や筆者が取り組んでみて思ったことや、感じたことをお伝えします。

ドローンによる空撮

 倉敷市南山城跡の発掘調査では、山城の全体をドローンで周回した動画を撮影しました。これは山城のスケール感や構造が分かりやすいとご好評をいただきました(図1、センターの展示室やYouTubeチャンネルで動画を視聴することができます)。

 筆者もセンターが所有しているドローンを使って動画撮影を一部担当しました。ドローンは飛行させたり静止画を撮影したりするだけなら簡単ですが、見栄えのするアングルや飛行ルートを考えながら、ブレのない動画を撮るとなると途端に難しくなります。大変苦労しましたが、多くの方に山城ならではの魅力が伝わって良かったと思います。

南山城跡YouTube公開動画
​図1 南山城跡のドローン空撮動画(センターYouTubeチャンネルの「発掘!南山城跡」より)

デジタル写真による三次元計測(フォトグラメトリ)

 フォトグラメトリについては、令和元年ごろからMetashapeというソフトウェアの利用をはじめており、それ以来、土層断面や現場全体などの記録で活躍しています。私の個人的な経験で恐縮ですが、学生時代にフォトグラメトリによる三次元計測に携わったことがあったので(註1文献ほか)、導入当時にこうした経験を活かすことができ、とても嬉しかったことを覚えています。その後、自分自身が調査に携わった倉敷市南山城跡での土塁の断面や津山市桑山3号墳の主体部の調査各段階の記録を行ったほか、同高尾北ヤシキ遺跡ではドローンを使用して遺跡全体の計測を行いました(図2~4)。 

 また、令和4年度に当センターを会場として行われた、奈良文化財研究所のフォトグラメトリの方法に関する研修などを通して、発掘調査の方法の一つとして調査員の間で認識が高まってきました。

南山城跡土塁断面オルソ画像

図2 倉敷市南山城跡の土塁断面オルソ画像(報告書より)
※高さ3m近い土塁(土塁2)の断面を図化したもの。黒褐色土の土塊が細かい単位で積み上げられていることや黄褐色土による盛土の様子を視覚的に表現することができました。

桑山3号墳オルソ画像

図3 津山市桑山3号墳箱式石棺のオルソ画像(2019年度筆者作成担当)
※2~3歳の幼児が埋葬された未盗掘の箱式石棺を検出。記録のため、調査のステップごとに三次元計測を実施しています。
 左の図は石棺蓋を検出した状態。石棺に蓋をしたのち、土師器壺や須恵器蓋坏を供えて葬送儀礼を行った様子が分かります。中央は石棺蓋を取り外した状態。図上側が頭で、頭骨や顎骨の一部がよく残されていました。この幼児は大人顔負けの豊かな副葬品を携えており、その配置が分かります。右の図は副葬品を取り上げ、石棺材を掘り出した状態。石材が隙間なく組み合わされています。

高尾北ヤシキ遺跡鳥観図
図4 津山市高尾北ヤシキ遺跡鳥瞰図(2021年度筆者作成担当)
※調査の最終盤に、ドローンを用いて遺跡全体の記録を行ったもの。弥生時代から古墳時代、鎌倉・室町時代など、複数の時代の建物や柱穴がみつかっています。柱穴の組み合わせを検討するうえで、三次元計測による遺構の立体的な把握がとても有効でした。

航空レーザー測量

 航空レーザー測量による詳細な地形データや赤色立体図の活用も進みつつあります。例えば、「吉備路の歴史遺産」魅力発信事業として総合調査を実施した史跡こうもり塚古墳(総社市)では、古墳を含めた周辺地形の航空レーザー測量を実施しました(図5)。古墳墳丘の詳細な形状が明らかとなっただけでなく、周辺の遺跡も含めた評価を考えていくうえで重要な情報を得ることができました。

こうもり塚古墳鳥観図
​図5 総社市こうもり塚古墳の赤色立体図による鳥瞰図(報告書より)
※航空レーザー測量の結果、前方部前端が丘陵を切断して形づくっていることや、墳丘裾の斜面が古墳を盾形に取り巻くように整形されていることが明らかとなりました。こうした成果が発掘調査の方法を考えていくうえで重要な役割を果たし、史跡範囲の追加指定へと繋がりました。

 ここ最近では、岡山県全県の航空レーザー測量による測量成果が利用できるようになったことはとても大きな変化といえます。当センターでも地形データの活用を進めており、その成果の一部として、大型の前方後方墳(図6)などを新たに確認したほか、山城についても新たな遺跡の把握や発見が相次いでいます。
 それ以外にも、遺跡の試掘・確認調査や本発掘調査の際に、詳細な地形データがあれば遺跡の範囲や成り立ちについて多くの情報を得ることが可能です。

奥ノ谷古墳の微地形図
​図6 新規に確認された前方後方墳(岡山市北区奥ノ谷古墳)の微地形図(2025年度筆者作成)
※この古墳そのものは以前から知られていましたが、前方後方墳であることを新たに確認しました。古墳の大きさは約60mで、岡山県南部の前方後方墳では大型のものです。微地形図によって、古い段階の古墳の特徴である、撥形(ばちがた)に開く前方部の形がはっきりと分かります。

今後の展望について

 ここまでご紹介してきた新たな技術や方法について、現在の取り組みは、埋蔵文化財の把握や発掘調査の進行をより高精度かつ効率的に実施するための取り組みといえます。今後求められていくのは、遺跡の調査や把握の成果を多くの方へ、より分かりやすい形で周知していくことではないでしょうか。
 古代吉備文化財センターで刊行している報告書やパンフレットは、図面や写真を通して調査成果を紹介しています。写真については、どんな方でも直感的に理解することが可能できますが、平面図や断面図といった図面から、遺構・遺物の情報をイメージするためには、どうしても専門的な知識や経験がある程度必要となってきます。しかし、動画や3Dモデル、立体図であれば、直接的・体感的に理解することができるでしょう。ドローン・フォトグラメトリ・微地形図といった新たな「視点」をもって、より分かりやすく、遺跡や文化財の魅力をお伝えできるような取り組みを試みていきたいと思います。
 最後に、「日本近代考古学の父」と呼ばれる濱田耕作が、著書『考古学関係資料模型図録』(1930年刊行!)で述べたことを引用して、このコラムを閉じることにしましょう。

「所詮三『ダイメンション』を有する品物は、矢張り三『ダイメンション』のものを以てしなければ、其の眞の性質を傳(つたえ)ることは困難である」(筆者註:ダイメンション=dimension、三次元の意)

 

(1)光本 順編2020『津倉古墳』岡山大学考古学研究室