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標点 平成22年9月号(通巻732号)

印刷ページ表示 ページ番号:0073920 2010年9月1日更新教育政策課

竹井教育次長

 読書への誘い

 県教育庁教育次長    竹井 千庫

 九月。灯火親しむ好季節を迎える。これからの時期、静寂な時間を確保し、じっくり読書にいそしんでみたいと思う。
 私は、通勤の時間と就寝前の僅(わず)かな時間を活用して読書するようにしている。「忙しくて時間がない。」との声もよく聞くし、私自身そう思ってもいたのだが、短時間でも継続していけば自(おの)ずと読書の習慣が身に付いていくようだ。最近では、本がないと寂しく感じるから不思議だ。
 読む内容は、小説や評論、随筆、仕事に関連したもの等様々で乱読である。ただ、小説は、特定の作家のものを続けて読むようにしている。司馬遼太郎の作品は長編が多いのだが、スーッと話の中に引き込まれていく。城山三郎の経済小説は、戦後の我が国の官僚や商社マン等の苦闘が鮮やかに描かれている。藤沢周平の文章はしっとりとして味わい深く、江戸や庄内地方の情景・人情が偲(しの)ばれる。吉村昭には、幕末や明治、昭和の戦前期の出来事を丹念に調べ上げた重厚な小説もあれば、現代に話題を求めた軽妙な小説もあり、その違いに魅せられる。
 ところで、司馬遼太郎の『坂の上の雲』と吉村昭の『ニコライ遭難』とでは、大津事件でのロシア皇太子ニコライの描き方に相当の違いがある。驚きとともに、どちらが真実に近いのだろうかと考えながら読むのも面白い。また、これらの作品に描かれた地に実際に出掛けてみるのも一興である。昨年末に『坂の上の雲』がテレビ放映されたが、ぜひ秋山兄弟や正岡子規の生家跡を訪れ、往時を偲んでみたいと思っている。
 さて、学校では、朝の十分間読書や図書委員会等による読書会など、様々な読書活動が推進されている。子どもたちがじっくり本に触れ、読書の面白さに気づいてくれればと思う。また、中・高校生には、幼稚園や保育所等での読み聞かせ活動にも取り組んでもらいたい。そうすることで、将来、親になった際、我が子に読み聞かせを通して、読書の魅力を伝えることもできるし、子どもも読書好きになると思う。
 今年は国民読書年である。毎日、少しでもいいから読書を続けていきたい。「継続は力なり。」