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令和7年9月 県議会定例会 知事提案説明要旨
令和7年9月 県議会定例会 知事提案説明要旨
本日は、皆様御多用のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございました。
今回提案いたしました諸議案の説明に先立ちまして、当面する県政の課題について申し述べ、県議会及び県民の皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。
はじめに
・米国の関税措置への対応
米国の関税措置につきましては、日米間で一定の合意があったものの、今後も我が国の産業・経済への影響が懸念されます。
国においては、関税措置が与える影響を十分に分析し、必要な支援に万全を期すとしており、本県におきましても、先日の情報共有会議の開催等により、県内支援機関や国等とも緊密な連携を図っているところであり、引き続き県内企業を対象に継続的に調査を実施するなど状況の把握に努めながら、必要な対策に取り組んでまいります。
・経済対策(関税対策、物価高騰)・財源の確保
経済対策につきましては、国の重点支援地方交付金を活用した補正予算案を今定例会に提案しており、米国関税措置の影響を受ける事業者への資金繰り支援の拡充や、物価高騰の影響を受ける地域公共交通・物流事業者への支援などに取り組んでまいります。
また、いわゆる「ガソリンの暫定税率」の廃止につきましては、地方の安定的な行政サービスの提供及び財政運営に支障が生じないよう、地方の減収に対しては代替の恒久財源を措置するなど、国・地方を通じた安定的な財源を確保することを前提に、丁寧に議論を進めるよう国に対して要望してまいります。
結婚・子育ての希望がかなう社会の実現
続きまして、第4次晴れの国おかやま生き活きプランに掲げる4つの重点戦略に沿って、御説明申し上げます。
まず、「結婚・子育ての希望がかなう社会の実現」についてであります。
・出会い・結婚応援
(結婚支援の推進)
結婚支援の推進につきましては、7月に、「晴れ恋♥晴れ婚プロジェクト」を立ち上げ、民間の事業者等との連携の下、SNSを活用した若い世代への情報発信や、県庁舎でのマッチングイベントなど、民間ならではの発想やノウハウを生かした取組を進めているところであります。
また、おかやま縁むすびネットの利用促進を図るため、先月からは、「ひとりじゃないって、けっこう自由。」をコンセプトに、JR車両での広告など、様々な媒体でのPRを展開しております。
さらに、結婚や子育て、働き方など今後の人生を考えるきっかけにもつながる同窓会の開催支援について、市町村と連携して取り組むとともに、ファジアーノ岡山とタイアップし、先月、首都圏と関西圏で岡山にゆかりのある若い世代の交流会を開催したところであります。
加えて、結婚や子育てに対する不安を解消し、みずから将来を思い描くことができるよう、子育て中の先輩から、結婚、子育てと仕事との両立等についての体験を聞く交流会を来月開催し、私も参加してリアルな声を聞くこととしております。
引き続き、若い世代が出会いや結婚を前向きに捉え、その希望をかなえることができるよう、様々な取組を積極的に推進してまいります。
・妊娠・出産・子育て支援
(妊娠・出産等の体制強化)
妊娠・出産等の体制強化につきましては、県の補助を活用することで、従来の9市町村に加え、新たに8市町村が不妊治療費の助成を開始したほか、新生児マススクリーニング検査の拡大分は、ほぼ全ての新生児が受検するなど、着実に取組が進んでおります。また、産後ケア事業の充実を図るため、来月、新たに医療関係者等を対象とした研修会を開催することとしており、引き続き、市町村や関係団体と連携しながら、誰もが安心して妊娠し、安全に産み育てられる環境づくりに取り組んでまいります。
・子育てと仕事の両立支援
(子育てと仕事の両立支援)
子育てと仕事の両立支援につきましては、従業員の家事代行サービスの利用支援や職場への育児スペースの設置など、子育てと仕事の両立が可能な環境づくりに活用できる「子育てしやすい職場環境助成金」を新たに創設し、先月から募集を開始したところであります。
また、男性の育児休業取得促進については、県内企業においても取組が進んでいるところであり、今年度も経営層向け啓発セミナーや奨励金事業等を実施することにより、さらなる取得促進と期間の長期化を図ってまいります。
引き続き、企業と連携し、男女がともに安心して子育てと仕事を両立できる職場環境づくりを進めてまいります。
夢を育む教育県岡山の推進
続きまして、「夢を育む教育県岡山の推進」についてであります。
・学ぶ力育成
(学ぶ力の育成)
学ぶ力の育成につきましては、7月に公表された全国学力・学習状況調査の結果において、中学校は、全国と同水準の結果であったものの、小学校は、全国を2ポイント下回る結果となりました。特に課題である小学校算数について、大学教授等の専門的知見も活用しながら、学力の定着に取り組むとともに、授業改善や家庭学習との連携、授業時間以外での補充的な学習指導の充実を図るなど、学ぶ力のさらなる育成にしっかりと取り組んでまいります。
また、大学や企業等の多様なステークホルダーで構成するSTEAM教育研究推進委員会を開催し、子どもたちの探究的な学びの質の向上に資するSTEAM教育の在り方について協議・研究しているところであり、今後、優れた取組や効果的な活動の共有を行い、課題解決型学習のさらなる充実により、実社会で新たな価値を創造する力の育成に取り組んでまいります。
・多様な教育ニーズ支援
(県立高校の教育体制整備)
県立高校の教育体制整備につきましては、先月、岡山県高等学校教育研究協議会を設置したところであり、社会情勢の変化や多様化する生徒のニーズに対応した、今後の県立高校の在り方について研究してまいります。
地域を支える産業の振興
続きまして、「地域を支える産業の振興」についてであります。
・企業誘致・投資促進
(企業誘致と投資の促進)
企業誘致と投資の促進につきましては、既立地企業のニーズへの対応や新たな企業の立地促進を図るため、市町村と協力して公的産業団地周辺の活用可能性の調査を進めているところであります。また、来月、東京で開催する企業立地セミナーにおいて私みずから岡山の優れた立地環境や優遇制度をPRし、本県への立地を働きかけるなど、引き続き、市町村と一体となって企業誘致と投資の促進に取り組んでまいります。
・企業の「稼ぐ力」強化
(中小企業等への支援)
中小企業等への支援につきましては、7月に群馬県で開催した大手自動車メーカーとの展示商談会においてトップセールスを行い、県内中小企業等32社の優れた技術や製品をPRしたところであり、今後の受注拡大につながるよう支援してまいります。
また、中四国最大級の展示商談会「おかやまテクノロジー展2025」を、オンライン展は来月から、リアル展は11月に開催することとしており、県内企業の新たなビジネスチャンスの創出に取り組んでまいります。
多くの事業者で喫緊の課題となっている事業承継の推進につきましても、来月フォーラムを開催し、さらなる機運の醸成に努めるとともに、承継を契機とした企業の成長を支援してまいります。
・観光振興
(観光振興)
観光振興につきましては、先月22日から3日間、大阪・関西万博に市町村等と連携して岡山県ブースを出展し、来場者に岡山の「食」を味わっていただくとともに、特産品や歴史・文化に触れていただくなど、国内外の多くの方に本県の魅力を発信してまいりました。
また、現在、おかやまハレいろキャンペーン2025を来月末まで実施しており、多くの方に「森の芸術祭 晴れの国・岡山」のレガシーとして残した作品など、本県ならではのアートや美食体験などを楽しんでいただいております。さらに、先週スタートした美作三湯芸術温度をはじめ、おかやま県民文化祭や岡山芸術交流など多彩な文化イベントとの相乗効果も図りながら、国内外に向け積極的にプロモーションを展開し、本県を拠点とした広域周遊の促進と観光消費額の拡大につなげてまいります。
(インバウンド)
インバウンドにつきましては、11月に、今後も訪日需要の増加が見込まれる韓国においてトップセールスを行うこととしており、旅行会社に向けた観光セミナーの開催や、岡山-ソウル線を運航する航空会社の訪問などを通じて、本県の魅力を積極的にPRし、さらなる誘客拡大を図ってまいります。
・儲かる農林水産業加速化
(県産果物のブランド力強化)
県産果物のブランド力強化につきましては、首都圏の百貨店において、今週末にトップセールスを行うほか、関西圏、海外でも積極的なプロモーションを展開し、栽培開始150年の節目を迎える桃・ぶどうに代表される県産果物の魅力をアピールしてまいります。また、市場からのさらなる出荷量増大のニーズに応えるため、ハイブリッド産地の育成やスマート農業の推進などにより、栽培面積の拡大や生産性の向上を一層進めてまいります。
・働く人応援
(本県への就職促進)
本県への就職促進につきましては、大学生等を対象とした合同就職面接会を開催したほか、先月から、企業と学生のオンラインでの交流会を実施しているところであります。また、働きやすい職場環境づくりに向け、学生や若手社員と県内企業の経営者等が、世代を超えて働き方や人材育成などをテーマに意見交換を行う交流会を開催するなど、引き続き、本県への人材還流と定着に取り組んでまいります。
(女性活躍の推進及び女性の定住・還流の促進)
女性活躍の推進につきましては、今年度から配置した女性活躍推進員による出前講座を通じて、固定的な性別役割分担意識についての気づきを促すとともに、来月から、ロールモデルになる女性管理職等との交流会を開催し、女性や若者のキャリア形成を支援することとしており、性別にかかわらず、誰もが個性と能力を十分発揮できる、魅力的な地域づくりを一層推進してまいります。
また、女性の定住・還流の促進につきましては、関西に進学した女子学生の意見等を取り入れた交流会を、本日、大阪において初めて開催し、私も参加することとしております。交流会では、本県の魅力や暮らしやすさをPRするほか、女子学生と岡山で活躍する女性との交流を行うことで、本県への関心を高め、卒業後のUターンを促してまいります。
(外国人材等への支援推進)
外国人材等への支援推進につきましては、岡山県外国人材等支援推進条例に基づき、これからの県の経済の維持発展に向けて、地域住民との共生の下に、外国人材の積極的な受入れや、安心して働き生活できる環境の整備を進めるため、現在、県内における雇用実態調査等を実施しているところであり、今後、これらの調査結果などを踏まえ、外国人材が地域産業の担い手として活躍できるよう、支援推進計画の策定を進めてまいります。
安心で豊かさが実感できる地域の創造
続きまして、「安心で豊かさが実感できる地域の創造」についてであります。
・保健医療充実
(地域医療体制の強化)
地域医療体制の強化につきましては、先月、医療関係者等で構成する岡山県医療DX推進協議会を設置し、ICTを活用した医療に関する課題整理を行ったところであり、今後、理解促進のためのシンポジウムを開催するなど、県内のそれぞれの地域において安全で質の高い医療を受けられる体制の整備に向けて取り組んでまいります。
(子宮頸がん・梅毒の予防)
子宮頸がんや梅毒の対策につきましては、若い世代に向け、効果的な発信ができるビジュアルや性格を持つ新たなインフルエンサーを生成AIにより制作するとともに、SNS上のトレンドや関心を分析した情報発信を始めております。夏休み期間中には様々な媒体を通じて重点的な配信を行い、県ホームページへの着実な誘導につながっており、引き続き、一人でも多くの方を救うため、正しい知識の普及啓発に一層取り組んでまいります。
・福祉サービス推進
(孤独・孤立対策の推進)
孤独・孤立対策につきましては、現状や課題を共有する官民連携プラットフォームの設置に向け、多様な主体の参画への契機とするため、先月、核となる機関・団体が参加するキックオフミーティングを開催したところであります。今後、当事者や支援者のためのポータルサイトの開設やシンポジウムの開催により、理解の促進や専門性を生かした支援に取り組んでまいります。
・防災対策強化
(防災対策の推進)
防災対策の推進につきましては、大規模災害時の集落の孤立に備え、市町村が進める分散備蓄を支援するとともに、国が「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」などで示す避難所の環境改善が進むよう、携帯トイレ等の計画的な備蓄を行うなど、市町村と連携して取り組んでまいります。
また、先月、バスやタクシーの事業者団体と、被災者や災害応急対策に必要な人員・資機材等の緊急輸送に関する協定を締結したところであり、引き続き、民間事業者との協力体制の一層の構築を進め、災害対応力の強化に努めてまいります。
・暮らしの安全推進
(暮らしの安全対策)
暮らしの安全対策につきましては、特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺の被害が後を絶たないことから、今年度、スマートフォン上で、生成AIを犯人役として詐欺の手口を仮想体験できるツールを新たに導入し、防犯講習会等で広く活用しているところであります。
また、今後、県民の防犯力の向上につながる犯罪発生情報、不審者情報等を配信する防犯情報配信アプリを開発・普及させ、県民が手軽かつタイムリーに必要な情報を入手できるようにしていくなど、引き続き、被害防止等に向けた積極的な広報啓発活動を推進してまいります。
・持続可能な中山間地域等形成
(地域公共交通ビジョン)
岡山県地域公共交通ビジョンにつきましては、先月、第3回策定会議を開催し、これまでいただいた様々な御意見を踏まえた骨子案を示したところであります。引き続き、持続可能で利便性の高い地域公共交通体系を構築するとともに、県民の公共交通利用を促進し、地域公共交通ネットワークの活性化を図るといったビジョンの基本方針に沿って、幅広く意見を伺いながら策定を進めてまいります。
(JR芸備線の再構築協議)
JR芸備線につきましては、再構築協議会において、7月から列車の増便や二次交通との連携強化等の実証事業を開始したところであります。今後、こうした実証事業の結果なども踏まえながら、さらに調査分析を進め、より利便性・持続可能性の高い公共交通の実現に向けて丁寧に議論してまいります。
・快適な環境保全
(ツキノワグマ対策)
ツキノワグマ対策につきましては、このたび鳥獣保護管理法が改正され、今月から人の日常生活圏にクマ等が出没した際に、市町村長の判断による緊急銃猟が可能になったことから、市町村に対して、実践的な研修を実施するとともに、クマ対策資材の確保に対する支援等に努めてまいります。
(林野火災の復旧の進捗状況)
岡山市・玉野市で発生した林野火災の復旧につきましては、治山ダム工事の発注準備や復旧計画の策定を進めるとともに、緑化等による森林機能の回復に向け、植栽樹種等の選定や苗木生産者との情報共有を行ったところであります。引き続き、関係市と連携し、所有者の同意取得を進めるなど、早期復旧に向け、計画的、継続的に取り組んでまいります。
・脱炭素化推進
(食品ロスの削減)
食品ロスの削減につきましては、来月の強化月間に合わせ、県内の小売店舗において「てまえどりキャンペーン」を実施するほか、事業者や学生等による優良取組事例を紹介する「食品ロス0フォーラム」を開催することとしており、こうした機会を通じて、引き続き、食品ロス削減の推進を図ってまいります。
・生きがい・元気づくり支援
(スポーツの振興)
スポーツの振興につきましては、ファジアーノ岡山のホームゲームにおいて、ホームエリアのチケットの完売が続くなど、スタジアムは大いに盛り上がっております。今月からは、県内全てのトップクラブチームのホームゲームと連携した応援イベントを開催するなど、引き続き、応援機運の醸成や誘客の促進を図りながら、スポーツによる地域の活性化に取り組んでまいります。
(おかやまマラソン2025)
おかやまマラソン2025につきましては、ニックネーム入りゼッケンの導入による沿道応援者の声かけ促進や、ハイタッチ応援ゾーンの新設などにより、ランナーと沿道応援者の双方のさらなる満足度の向上を図るとともに、本県の魅力を全国に発信できるよう、11月の大会本番に向け、準備に万全を期してまいります。
・情報発信力強化
(情報発信力の強化)
情報発信力の強化につきましては、本県の魅力をひと言で表す「晴れの国おかやま」をあらためて全国に広めるため、先月、首都圏アンテナショップで実施した記者発表会において、新たなキャッチフレーズ「だから、晴れの国」のPRロゴを発表するとともに、今年度のプロモーションの始動を広くお知らせしたところであり、当該ロゴも活用しながら、話題性のあるプロモーションを展開し、本県の認知度向上に努めてまいります。
・県庁舎の魅力発信
県庁舎の魅力発信につきましては、今年は設計者である建築家の前川國男氏の生誕120周年であり、前川建築に注目が集まる年であることから、来月、シンポジウムや県内の前川建築3施設を巡る見学ツアーを実施することとしております。
また、県庁舎の魅力を紹介する動画や英語版ガイドブックを作成中であり、県庁舎をはじめとした前川建築の魅力を国内にとどまらず海外に向けても発信できるよう、準備を進めてまいります。
・行政のDX推進
行政のDXの推進につきましては、これまでの専門人材の活用に加え、自治体職員みずからもDXの知見やスキルを高めるため、今年度の新たな取組として、先月、県・市町村職員を対象とした「おかやまDXアカデミー」を開講したところであります。各種講座を通じ、業務改善の進め方や知識等を実践的に習得することにより、各職場の業務に応じたDXを牽引する人材の育成を図ってまいります。
諸議案
次に、今回提案しております諸議案の概要につきまして、御説明申し上げます。
まず、予算案件につきましては、当初予算編成後の情勢の変化に伴い、早急な対応を必要とするものについて、補正措置を講じることとし、所要額を計上しております。
その結果、今回の補正予算額は、
一般会計において 12億2,700余万円の増額
であります。
補正後の一般会計予算額は、歳入歳出それぞれ7,801億4,900余万円であります。
一般会計歳入予算の主な内容につきましては、国庫支出金11億8,200余万円などを増額する所要の補正措置を講じるものであります。
一般会計歳出予算の主な内容につきましては、産業労働総合対策費4億2,200余万円、医療施設等施設整備費3億8,800余万円などを計上しております。
繰越明許費につきましては、地方特定道路整備事業など23件94億2,800余万円を繰り越ししようとするものであります。
債務負担行為につきましては、金融機関に対する利子補助金など新たに債務を負担しようとするもの3件であります。
特別会計につきましては、「岡山県港湾整備事業特別会計」において、所要の補正措置を講じるものであります。
次に、事件案件につきましては、工事請負契約の締結についてのもの3件並びに令和6年度岡山県営電気事業会計など3企業会計における決算認定等についてのものであります。
最後に、条例案件につきましては、「岡山県議会の議員及び岡山県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例の一部を改正する条例」など8件であります。
以上、今回提案いたしました諸議案につきまして、その概要を申し上げた次第であります。
なにとぞ、慎重御審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。