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津島ミュージアムだより 第十二回「困難をきわめた河道斜面部の調査」
第十二回 困難をきわめた河道斜面部の調査
困難をきわめた河道斜面部の調査
弥生水田の調査と並行して、河道(かつて川が流れていた場所)の北側斜面の調査を実施しました。調査期限が迫る中で一生懸命に調査を行ってきましたが、ここでも大きな壁に突き当たりました。その原因となったのが、出土する多量の土器や木製品でした。なかでも木製品は広範囲に、しかも上下に織り重なった状態で出土したため、検出から出土状況の写真撮影、さらに図化作業などの一連の作業は想定以上の時間を要しました。
また、木製品は発掘が難しい遺物の代表格であることも、調査を困難にしました。有機質である木製品は本来腐りやすいものですが、水分を多く含む川の堆積土のなかに埋まっていたことで、腐食せず変形もしない良好な状態で、約1800年間も地中に保存されていました。しかし、発掘調査によりこの安定が崩れ、空気に触れた瞬間から酸化や乾燥がはじまり、そのままだと干からびて元の姿を失ってしまいます。これを防ぐため、調査中は常に噴霧器を用いて木製品の乾燥対策を講じました。その後、実測が終了次第、保管と整理のために取り上げて整理事務所へ搬送しますが、これも気の抜けない慎重な作業でした。長年土中にあった木製品は脆弱で、壊れやすくなっているからです。破損を防ぎ安全に搬送するために、緩衝材や板材などで入念に梱包を行いました。
このように、河道斜面部の調査は、検出から取り上げまで終わりの見えない大変困難なものとなりましたが、調査員と作業員の努力と連携が功を奏し、12月中旬には終了することができました。
出土した木製品は約1300点にのぼり、その一部は現在ミュージアムに展示しています。調査中の様子も映像で見ることができますので、是非お越しいただき、ご覧ください。
(ミュージアムスタッフS)
慎重に進める検出・写真撮影・図化作業
建築材に水分を補給しながら行われる調査