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第132回 森林研究所の散歩道(ヒノキ、チチコグサモドキ編)
第132回 森林研究所の散歩道(ヒノキ、チチコグサモドキ編)
第132回の今回は、ヒノキとチチコグサモドキについて紹介します。
ヒノキはヒノキ科ヒノキ属の常緑高木です。本州から九州の主に冷温地に自生します。しかし、木材のために各地で大量に植林され、その後に野生化したものも多く、自生との区別は難しいです。
高さ30m、直径60cm程度になります。主要造林樹種であるスギと比較すると成長は遅いです。また、スギは沢沿いなどの湿潤な環境を好みますが、ヒノキは尾根などの乾燥した環境を好みます。
小さなうろこ状の葉が枝に密に対生していきます。独特な形状であり、オウゴンチャボヒバなどの多くの栽培品種も作られてきました。
材として世界的にも優秀なものであるため、用途の幅はとても広いです。社寺建築や彫刻、船舶などにも利用されます。
和名の由来は本種を擦り合わせて火をおこしたため、「火の木」と呼ばれたためと言われています。
岡山県久米郡美咲町にある江与味八幡宮には推定樹齢400年になる随神ヒノキがあり、津山の名木百選に選定されています。
(出典)城川(2001)樹に咲く花.山と渓谷社.p626.
馬場(1999)葉でわかる樹木.信濃毎日新聞社.p116.
林(2020)樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類.山と渓谷社.p68.
貴島ら(1962)原色木材大図鑑.保育社.p21.
岡山県津山地方振興局(1993)津山の名木百選.岡山県津山地方振興局.p42.
岡山県神社庁.八幡宮.https://www.okayama-jinjacho.or.jp/search/17531/ (2023年9月7日閲覧)
写真1 ヒノキ 写真2 ヒノキの球果
(写真1、2は2023年6月19日に撮影)
チチコグサモドキはキク科チチコグサモドキ属の1~2年草です。北アメリカ原産ですが、現在では日本中に分布します。道ばたや空き地に自生します。
全体的に縮れた綿毛に被われており、灰白色を帯びます。高さは10~30cmになります。
葉はやや先太りしています。5~9月につく淡褐色の頭花は、葉のわきにまとまってつくため穂のように見えます。
果実につく冠毛は基部で結合しており、果実から離れてもバラバラにならずまとまったままという特徴があります。
チチコグサに似ているという意味の和名ですが、外観はむしろハハコグサに近いです。
(出典)米倉(2019)新維管束植物分類表.北隆館.p241.
長田(1976)原色日本帰化植物図鑑.保育社.p80.
長田(1981)原色野草観察検索図鑑.保育社.p134.
林(1983)日本の野草.山と渓谷社.p15.
写真3 チチコグサモドキ 写真4 チチコグサモドキの花
(写真3、4は2023年6月19日に撮影)
所内の散策をされる際にはこれらの植物も一緒に探してみてはいかがですか。
また、植物の位置がわからない場合はお気軽にお尋ねください。