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第128回 森林研究所の散歩道(コバノカモメヅル、クズ編)
第128回 森林研究所の散歩道(コバノカモメヅル、クズ編)
第128回の今回は、コバノカモメヅルとクズについて紹介します。
コバノカモメヅルはキョウチクトウ科カモメヅル属の多年生つる植物です。関東、中部、近畿地方に分布しており、山麓などに自生します。
葉は数センチの葉柄を持ち、披針形で先はとがります。花は夏に、葉のわきから出る花柄の先にまばらにつきます。暗紫色の花冠は放射状に深く5つの裂が入っており、中心に雄しべや雌しべの集まったずい柱があります。
白花であるアズマカモメヅルや北海道などに自生する葉先が長く鋭く尖ったシロバナカモメヅル、関東から近畿地方にかけて生息する花の大きなジョウシュウカモメヅルといった品種などが存在しています。
(出典)林(1983)日本の野草.山と渓谷社.p253.
佐竹(1981)日本の野生植物.平凡社.p43.
牧野(1982)原色牧野植物大圖鑑.北隆館.p449.
大井(1975)改訂増補新版 日本植物誌 顕花編.至文堂.p1114.
写真1 コバノカモメヅル 写真2 コバノカモメヅルの花
(写真1、2は2023年7月24日に撮影)
クズはマメ科クズ属の多年生つる植物です。北海道から九州に分布しており、山野のいたるところで見ることができます。
茎は横に這いながら長く伸びていき、長さが10mにもなり、また基部は木質化する大型のつる植物です。
全体に褐色の粗い毛があります。また写真4のような紫紅色の蝶のような形をした花を多数つけます。花は甘い香りがするそうです。
長さ1.5m、直径20cmにもなる大きな根にはデンプンが10%以上含まれており、古くから様々な用途で利用されてきました。漢方の葛根湯や葛餅などが有名です。
和名の由来は、奈良県にある国栖(くず)という地名が葛粉の産地であったためだそうです。
(出典)佐竹(1981)日本の野生植物.平凡社.p210.
林(1983)日本の野草.山と渓谷社.p384.
奥田(1982)岡山の薬草.山陽新聞社.p124-125.
写真3 クズ 写真4 クズの花
(写真3、4は2023年7月24日に撮影)
所内の散策をされる際にはこれらの植物も一緒に探してみてはいかがですか。
また、植物の位置がわからない場合はお気軽にお尋ねください。