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インフルエンザについて
インフルエンザとは
インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症です。
毎年世界中で流行が見られます。
主な感染経路は、咳・くしゃみ・会話等から発生する飛沫による感染(飛沫感染)であり、他に飛沫の付着物に触れた手指を介した接触感染もあります。
感染後、発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続きますが、いわゆる「通常感冒」と比べて全身症状が強いことが特徴です。
通常は、1週間前後の経過で軽快します。
病原体
インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3型があり、流行的な広がりを見せるのはA型とB型です。
A型とB型ウイルス粒子表面には赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という糖蛋白があり、これらが感染防御免疫の標的抗原となっています。特にA型では、HAには15種類、NAには9種類の抗原性の異なる亜型が存在し、これらの様々な組み合わせを持つウイルスが、ヒト以外にもブタやトリなどその他の宿主に広く分布しています。
臨床症状
A型またはB型インフルエンザウイルスの感染を受けてから1~3日間ほどの潜伏期間の後に、発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然現われ、咳、鼻汁などの上気道炎症状がこれに続き、約1週間の経過で軽快するのが典型的なインフルエンザで、いわゆる「かぜ」に比べて全身症状が強く現れます。
特に、高齢者や年齢を問わず呼吸器、循環器、腎臓に慢性疾患を持つ患者、糖尿病などの代謝疾患、免疫機能が低下している患者では、原疾患の増悪とともに、呼吸器に二次的な細菌感染症を起こしやすくなることが知られており、入院や死亡の危険が増加します。小児では、中耳炎の合併、熱性けいれんや気管支ぜんそくを誘発することもあります。
治療・予防
抗A型インフルエンザ薬としてアマンタジンが使用されますが、B型ウイルスには無効です。
A型・B型の両方に有効な治療薬として、ノイラミニダーゼ阻害薬のザナミビル、オセルタミビル、ベラミビル、ラニナミビルがありますが、これらに加えて、Capエンドヌクレアーゼ阻害薬のバロキサビルが2018年から新たに承認されました。
予防法としては、インフルエンザワクチンの接種が最も有効です。
特に65歳以上の高齢者、又は60~64歳で心臓、腎臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方、あるいはヒト免疫不全ウイルスにより、免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方は、予防接種法上の定期接種の対象となっています。
その他の予防法としては、飛沫感染対策としての咳エチケット(有症者自身がマスクを着用し、咳をする際はティッシュやハンカチで口を覆う等の対策を行うこと)、接触感染対策としての手洗い等の手指衛生を徹底することが重要です。
また、高齢者への感染予防の観点から、医療・福祉施設へのウイルスの持ち込みを防ぐために、関係者が個人でできる予防策を徹底すると同時に、訪問者等については、インフルエンザの症状が認められる場合の訪問を自粛してもらう等の工夫が重要です。