岡山に来て2度目の夏が過ぎた。岡山の土地を知り、体感しようと、休日は県内各地の史跡・名所や学校近辺の休日の様子を見て回っている。今春までに県内全市町村を巡り、今は更にディープな場所探しとこれまで巡ったところで気に入った場所を再訪している。 各地を探訪するなかで思うことが二つある。 一つは、岡山は海山川と三宝の自然に富み、歴史的史跡も多く、子どもの多様な体験を可能にする教育素材に溢れた非常に恵まれた土地であるが、普段の休日に、そういった場所で余り子どもの遊ぶ姿を見かけないことだ。中学生になれば部活動等が忙しく、また屋内でゲーム等で遊ぶことが多いのが実態と聞く。国立青少年教育振興機構の平成24年度実態調査でも、自然体験や生活体験が豊富な子どもほど、自己肯定感が高く、学力面でも得意な教科が多い等の調査結果が示されている。長期の休みなどの機会も活用し、少しでも多くの子どもたちがこの岡山の豊かな環境を思いっきり体感し、学ぶことができれば良いと思う。 もう一つは、「里海」再生の物語が、今求められる学校運営の有り様と同じということだ。繰り返し再訪している気に入りの風景に、備前の夕立受山(ゆうだちうけやま)からの島々の眺望がある。湾内に牡蠣筏を浮かべ、小豆島まで島々が重なり織りなす瀬戸内海の景色は、夏の濃い海色も、冬晴れ、そして春の霞の時期もいずれも趣があり、春夏秋冬、牡蠣や鱧などの海の幸の美味は格別だ。 この豊かな日生の海も、かつては、漁獲不振に喘ぐ苦しい時期があったと聞く。数多くの魚介類が生まれ育つ「海のゆりかご」としてのアマモ場が、沿岸開発や環境悪化等の影響によって大幅に消失してしまったのが主たる要因とのこと。危機感を抱いた漁業者が、かつてアマモが生えていた海域に種を蒔く地道な活動とともに、海に恵みも汚れも流れ入る川上の森林についても、草刈り、枝打ちなどの環境整備を進めたとのこと。また、海が抱える課題を積極的に発信し、地域住民、大学生、NPO、行政機関など共に行動する者の輪を広げていった。これらの取組により昭和60年に12haまで減少していたアマモ場が平成23年には200haまで回復し、漁獲量も増加したとのこと。 このように人が手を加えて作り上げる里山ならぬ里海を学校に、アマモ場を学級に、川上の森林を家庭に、取組に賛同する者を地域、関係機関に、そして主体的に行動する漁業者を教員と置き換えてみるとどうだろう。 落ち着いた環境で子どもたちが学習できる教室内環境や学習の決まりなどの基盤づくりとともに、学校の現状や取組をどれだけ分かりやすく効果的に発信し、家庭・地域に取り組んで貰いたい事を伝え、「協働」の取組に繋げるか。学校からどのような海風を吹かせるか。これを期待し、意欲的な学校の取組をしっかりと後押ししたい。 |