九月中旬の新聞に、日本の大学生の学力低下論争に火をつけた神戸大学の西村和雄教授等が行ったとある調査結果が載っていた。子どもの時に受けた「しつけ」と「所得・学歴」との相関関係について、インターネットにより一万六千人からの回答を得ての傾向調査である。八つの項目のうち、「うそをつかない」、「他人に親切にする」、「ルールを守る」、「勉強をする」の四つの項目が所得・学歴との関係が見られたという。一方、「ありがとうと言う」、「あいさつをする」などはあまり所得・学歴差が見られなかったとのこと。県下一斉あいさつ運動の日を推進している者からすれば、これには違和感と残念が率直な感想である。しかし、改めて関係が見られたとする四つの項目を見ると、より能動的な行動を求められる項目だからこそ強く将来に影響しているのかもしれない。 しつけとは「躾」、「仕付け」とも書き、辞書によると、その字のとおり、(人として美しい)礼儀作法を「身」につくよう教え込むこと、縫い目等を正しく整えるため仮に縫うこととある。先述の調査に挙げられた「しつけ」はどれも基本的な、当たり前と思われることだ。しかし、本県の児童生徒の学習状況調査、問題行動調査の結果を見るにつけ、この「当たり前」のことが徹底できていないのではと残念ながら思わざるを得ない。 平成二十五年度全国学力学習状況調査における学校質問肢等でも、「自校の児童生徒が礼儀正しい」とする県平均割合は全国平均と比較し、小学校では七ポイント、中学校は四ポイント(二十四年度は十一・二ポイント)低い。また家庭学習の時間の短さなど学習習慣や、小学校算数A問題を始めとする基本的な学習項目の理解・定着に課題が見られる。 パナソニックの創始者である松下幸之助氏が、良い会社を見る観点として「従業員のあいさつ」、「整理整頓」、「トイレの掃除」の三つを上げ、自らも実践、徹底されていたとのエピソードを思い出す。氏曰く、このような平凡なこと、簡単なことができない人間は決して難しいことはできない、しかし、しっかりやり続ける人は間違いなく伸びると。 松下氏の言葉は、行動の基盤を整えることの重要性を示唆している。教育に置き換えれば、学習の基礎・基盤、学級活動・学校運営の基盤を整えることが何より大事で、それを徹底的にやり抜くことができる「意志」を教員自らが持ち、子どもたちに芽生えさせることが成功の秘訣ということではないか。 言うは易しで簡単な事ではないのは承知だ。しかし、子どもたちが将来、自分で大きく飛び立てるよう、貴重な成長期に関わり、飛び立つ準備を「正しく整える」、身につくよう「仕付ける」営みを続けることが、私たち、教育関係者の責務であり、そもそも喜びではないか。 皆さんの学級、学校で、徹底すべき「凡事」とは何でしょう?改めて、自らの学級等の学習規律、生活のきまり、授業の進め方を振り返り、必要なものに徹底的に取り組む実践を期待するとともに、行政にいる者として、熱意のある頑張る取組を後押ししていきたいと強く思う。 |