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標点 平成25年7月号(通巻766号)
教(お)せてもらう用意 津山教育事務所長 小 瀬 善 浩 | |
五百八十八人。 平成二十五年度に岡山県と岡山市で新たに採用された公立学校教職員数です。順調に育ってほしいと願っています。 ところが、新採用教職員の指導がなかなか上手くいかないと校長から聞くことがしばしばあります。容易に解決できないことを承知した上で、あえて言います。後輩を育てるのは、校長をはじめとする先輩教職員の重要な仕事です。何とかしなければなりません。 さて、題ですが、「舞妓の言葉」西尾久美子著から引用させていただきました。普通に言うと「教えてもらう用意」です。 舞妓を目指す子は、多くの場合中学校を卒業して十五歳でこの道に入ります。わずか十五歳で進路を決めた強い意思があっても、人に尋ねて教えてもらうことの大切さはわかってなく、悪気はないが自分勝手に動くので、周囲を驚かせることがあるそうです。だから「教(お)せてもらう用意」を先輩がきめ細かく教えるのだそうです。 「電信棒(柱)見ても、おたのもうします」「頭で考える前に、おいど(お尻)動かさんと」などの言葉から「あいさつ」「まず体を動かす」等を徹底して教えられます。「教(お)せてもらう用意」を整えるのです。 そして、わずか二年ほどでお客が何も言わなくても期待していることを察し臨機応変のサービスができる、おもてなしのプロである舞妓になります。「教(お)せてもらう用意」が身につき何事も素直に吸収できるようになっているからこそできることです。 新採用教職員には、研修と並行して、「教えてもらう能力」を伸ばす指導をしてはどうでしょうか。本来なら社会人として当然身につけておくべき、あいさつ、謙虚に学ぼうとする心構え、先輩を尊敬する態度等「教(お)せてもらう用意」を改めて指導することが必要ではないかと思うのです。 なぜなら、「教(お)せてもらう用意」が十分にできていないまま既定の研修を受けることが、指導が上手くいかない要因の一つではないかと思うからです。これからの岡山県の教育を担う人材を大切に育てていきたいと思うのです。 |