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標点 平成25年4月号(通巻763号)
| 命から問いかける 県教育委員会委員長 梶 谷 俊 介 |
岡山県の教育は様々な課題を抱えています。今の時代は綺麗な映像による情報が大量に提供され、バーチャルとリアルの差がわかりにくく、命を実感する機会が少なくなっていると感じます。私は、教育の再生は命について共に考えることがヒントになるのではないかと思っています。 人間は両親がいなければ生まれてこないこと。つまり、多くの祖先の命が繋がって初めて自分が生まれたこと。他の命を食べ、他人の助けがなければ生きていけないこと。一人ひとりが違うこと。自らの力で成長すること。そして、必ず死ぬこと。死ぬと生き返らないこと。このような事実を子どものうちに実感として伝えて、何のために学ぶのかを命との関係で問いかけることが、知識を受け身で学ぶ以上に必要だと思います。 同じ環境に置かれて、心がくじけてしまう子もいれば、何くそと頑張る子もいます。事実をどのように認識するかで行動は変わり、その後の結果に差が出ます。置かれた環境をどのように認識するかはその人の責任です。現象は自分で変えられませんが認識は自分で変えることができます。変えられないものを変えようとして腹を立てるより、変えられるものを変えることで自分の行動が変わり、状況が変わることを伝える必要があるのではないでしょうか。 人はみんな同じではありません。持ち味が違う人が助け合うから一人ではできないことができるのです。違うことにこそ価値があるのです。しかし、一つの物差しだけで測ると違うことの価値が見えなくなります。物差しはたくさんあっていいのです。学習することで物差しがたくさんあることに気づいて欲しいと思います。 学びは本人がその気になると吸収し、力になりますが、本人がその気にならなければ、周囲が頑張って教えても身につきません。その気にさせられるかどうかが教師の力量だと思います。一人ひとり違うから、万人に通用するやり方は存在しませんが、命について考えることから自分の価値に気づき、自分と社会とのつながりに気づき、その気になるきっかけになるのではないでしょうか。 |