本文
標点 平成25年3月号(通巻762号)
| 博物館の魅力発信 |
世間でいう「博物館行」という言葉は、ある物がその役割を終え不用になったという意味合いで用いられる。一般的に博物館は、単なる過去の遺物の集積施設として認識されているのだろうか。 申すまでもなく博物館の使命は、「歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすること」(博物館法)である。 昭和四十六年に開館した県立博物館は、四十年を超す歩みの中で、各種の展覧会を開催するとともに、収蔵資料の充実を図り、その数は約一万五千件に及ぶ。内訳は、古墳から出土した銅鏡、鎌倉時代の武将が着用した大鎧、衆生が救済を求めて仰ぎ見合掌した仏像・仏画、桃山時代の茶人が愛用した備前焼、中国山地奥深くで椀や盆を挽いた木地師の轆轤・鉋、児島湾の干拓地で工夫された農具等、多種多様である。それぞれに歴史的背景を持つ郷土の貴重な文化財である。 高度経済成長期以降、地域色に富んだ博物館・美術館が各地に建設され、全国で現在約五千七百館余り、昭和末期と比較しても約二・五倍に増加、しかし一方で、一館当たりの入館者数は約半分に減少するという事態に直面している。また、経済状況の変化等により、公私立を問わず博物館運営を取り巻く環境は厳しい。 そうした中、博物館の活性化に向けた取組が実施されている。備前長船刀剣博物館でのアニメ映画やアクションゲームとのコラボによる展覧会、BIZEN中南米美術館ではイメージキャラクターによる広報活動等、注目される。本館でも学校教育との連携を最重要課題と捉え、「出前授業」や歴史を体感できる「吉備の国ジュニア歴史スクール」等の事業を展開、今年度からは収蔵資料を活用し郷土の歴史を分野別にコンパクトにまとめた映像を作成、HP上で館の魅力を配信する。 近年の学習指導要領改訂に伴い、学校教育での博物館等の活用が盛り込まれ、今改めて館の存在意義が問われている。県内博物館の中核施設としての使命と自覚を持って、県民・社会のニーズを的確に把握し、時宜を得た展覧会の企画に努めるとともに、「博物館発」の情報発信に取り組みたい。 |