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標点 平成24年1月号(通巻748号)

印刷ページ表示 ページ番号:0260487 2012年1月4日更新教育政策課

竹井県教育長

仁科芳雄博士からの手紙

 岡山県教育委員会教育長 竹井 千庫

 本年は壬辰年。水を得た竜が天空を駆け巡るように、本県教育界にとって、上昇気流に乗った躍動感あふれる1年にしたいと決意を新たにしている。
 さて、昨年の秋、里庄町教育委員会から『仁科芳雄博士より弟にあてた手紙』と題する小冊子を頂いた。手紙が書かれたのは、明治43年4月。博士が旧制岡山中学を卒業して第六高等学校の受験準備をしている時に、旧制津山中学生の弟に宛てたもので、博士が20歳頃のものである。
 弟に対し、日頃の勉強によって学力を付けることが大切だと言い、試験前の「にわか勉強」、特に夜遅くまで起きての勉強は、すぐに忘れて何の役にも立たないと否定する。そして教室での勉強に集中するように注意を促している。
 また、講義内容の理解を深めるためには、前日に予習をし、教室では注意をして聞き、帰って必ず復習する。そして1週間分の全科の復習を土曜日の晩か日曜日の朝にするようにと言っている。ここで面白いのは、勉強する時の姿勢や光線の受け方にまで注意を促していることである。もちろん、社会に出て大事をなそうとする者にとっての健康や体力の大切さについても細かに記述されている。
 このほか、参考書を多く読むようにとも言っている。学術書だけでなく、今昔の偉人伝などを読み、人としての修養を積み、未来に雄飛すべき資質や能力を身に付けるようにと。学校の勉強に追われて、これらを怠ったら、学校で成績がよくても、社会に出てから役に立たないと警告している。
 また、主義のある人になれと言っている。ここでいう主義とは、信念とか生き方といったものと考えられるが、たとえ多くの人が自分のことを悪く言っても、主義に基づいてやり通すべきだと。
 以上が手紙の骨子である。弱冠20歳の若者の経験から出た言葉ではあるが、その識見や意識の高さに驚かされる。里庄町では、この小冊子を町内の中学生に配布していると聞くが、もっと多くの子どもにも読んでもらい、知育・徳育・体育を兼ね備え、未来を切り拓いていく有為な人に成長してもらいたいと切に願っている。