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津島ミュージアムだより 第十七回「蹴放し(けはなし)が物語る、ミステリアスな弥生建物の姿」
第十七回 蹴放し(けはなし)が物語る、ミステリアスな弥生建物の姿
蹴放し(けはなし)が物語る、ミステリアスな弥生建物の姿
「蹴放し(けはなし)」は、建物の内と外を仕切る敷居(しきい)の部材です。津島遺跡では、弥生時代後期の川だった場所の斜面で保存状態の良好な多数の木製品が見つかっており、その中に「蹴放し」がありました。これは、高床建物の部材の一部と考えられており、いくつかの手掛かりが、建物のミステリアスな姿を現代に生きる私たちに伝えます。
蹴放しに使われた木の種類は、ツブラジイというドングリの実をつける広葉樹で、日本列島の関東以西に広く分布しています。長さ84cm、幅22cm、厚さ5cmの長方形に整えられ、所々に緻密な加工が施されています。この加工は玄関を構成する扉や扉周りを囲む板壁を組み合わせるために付けられたものです。
まず、両側の端部には、幅10cmの方形の「欠き込み(かきこみ)」があり、これは辺付(へつく)という柱をはめ込む部分です。また、上面には辺付の近くに直径4cm、深さ約3cmの円形の穴がみられます。これは扉の回転を支える軸穴であり、蹴放しの片側に一個あることから、扉は片開きであったことがわかります。さらに、蹴放しの中軸線上には33cmの間隔をもって長方形の溝が二つくりぬかれているのが見られます。約13cmと約18cmを測るこの溝は「方立(ほうだて)」という板材をはめ込む部分であり、扉が外側に開かないようにする役割があります。これにより、想定される出入口の幅は約30cmと考えられ、人が日常的に出入りするのには不便な、極めて狭い造りだったことが分かります。
さらに、興味深い痕跡もあります。方立の内側に扉の幅だけ隔てたところに穴があり、そこに木の棒が差し込まれた状態で残っていました。これは「猿(さる)」と呼ばれる鍵であると考えられ、建物の中に人が入ってこの棒を穴に差し込むことで、扉が固定され外から開けることができない仕組みになっています。
加えて、人が実際に出入りしたことがうかがえる箇所も見られます。鍵(猿)がある反対側に、はしごが敷設された痕跡や扉が開閉されたと考えられる線状の傷の痕跡も見受けられることです。
今回紹介した蹴放しは、遺跡&スポーツミュージアムで間近に観察いただけます。また、これらの手掛かりを基に復元された蹴放しの様子は、津島遺跡のシンボルモニュメントとして復元された高床建物に見ることができます。鍵付きの極めて狭い入口の奥にいた人物は、いったいどのような人だったのでしょうか。「卑弥呼」のような女性のシャーマンがいたのでしょうか。ミステリアスな建築部材を手掛かりに、想像は尽きません。
(ミュージアムスタッフ M)
「蹴放し」:図の青色部分
展示されている「蹴放し」
復元された高床建物
高床建物の出入口部分
