二十一世紀を迎えて十年余が過ぎました。この間我が国は急激に少子高齢化、高度情報化、グローバル化が進み、社会の変貌は子どもや学校教育にじわじわと影響を及ぼしてきました。 情報メディアの普及は、直接的な人間関係を一層希薄化させ、「ネットいじめ」などの新しい問題状況をうみました。また、核家族やひとり親世帯が増え、周囲から十分な愛を注がれず、狭い人間関係の中で育つことで、自分に自信が持ちにくく不安を感じやすい子どもたちが増えています。 文部科学省による問題行動等調査を分析してみると、不登校・暴力行為の加害者・いじめの被害者はいずれも中学校一年生の時に急増しています。不登校・暴力行為・いじめと行動の表現は異なりますが、「中一ギャップ」というストレスに対応できず、支えてくれる仲間も少ない中で、引きこもったり荒れたりすることによって自分を守る反応をしたものといえるのではないでしょうか。 さらに、産業構造や雇用の変化は国民の経済格差を拡大させただけでなく、教育格差を再生産し固定化させています。要保護及び準要保護の児童生徒数は増加し、それに比例するように児童虐待の数も増加しています。手厚い教育が保障されている子どもと、そうではない子どもの格差が将来にわたって拡大していく中で、子どもたちは未来に明るい夢を持つことが難しくなっています。 では、こうした子どもたちに求められる二十一世紀の教育や学校の役割とは何でしょうか。 岡山市の岡輝中学校区における「協同学習」の取組が、二月に開催された「岡山県の教育を考える県民フォーラム」で紹介されました。この学区では、生徒同士のつながり・学びあいを大切にして、「授業を通して子どもを変えていこう、学校を変えていこう」という「協同学習」の取組が継続されてきました。荒れた子どものありのままを地域に見せ、地域の協力を得て、学校では「協同学習」に取り組むことで、学校と地域に、全ての子どもの居場所と出番を保障しようとしました。子どもたちは、つながる喜びを共有し、学ぶ楽しさを実感することで、授業妨害や徘徊がなくなっただけでなく、不登校も半減したそうです。 今、県内において地域に開かれた学校づくりや全校的な授業改善を通して、子どもたちに豊かなつながりの中で学ぶ意欲と確かな学力をつけようと取り組む学校が増えてきました。自分を守ってくれる人、励ましてくれる人とつがなり、自分らしさを安心して発揮できる時、人は積極的に活動し、学び、成長していくことができると思います。これは、子どもも大人も同じです。すべての子どもと大人が、つながる喜び、学ぶ楽しさの実感を高めて、ともに育ちあう時間を共有できる学校こそ、二十一世紀に求められるのではないでしょうか。 |