多賀城市内館館跡の調査                   

文/宮城県教育委員会 米田 克彦

   

 初夏を迎えて特別史跡多賀城跡を紫白色のアヤメが彩るころ、多賀城市の内館館跡〈うちだてたてあと〉の調査は佳境に入りました。
 内館館跡は、調査前より航空写真などで観察できるクロップマークをもとに複数の掘に囲まれた館跡の存在が知られていました。今回の発掘調査では、クロップマークに合うように館の東西と北を区画する2条ないし4条の堀跡が見つかったうえ、堀に囲まれた館の中央では掘立柱建物跡や井戸跡が確認されました。また、館跡から南へ少し離れたところでは奈良・平安時代の掘立柱建物跡、館跡の北西側では東西または南北に畝の方向を揃えた平安時代の畑跡が見つかり、多賀城跡西側の古代の様子も少しずつ分かってきました。
 6月4日(土)には、これらの調査成果を公開するため、現地説明会を開催しました(現地説明資料は第21回の便り)。調査成果の目玉は、航空写真などで観察された堀跡のクロップマークと発掘調査で確認された中世の館跡に伴う複数の堀跡や関連施設との関係。その成果が事前に新聞等で取り上げられたこともあって、当日は県内外から120名もの方々の参加がありました。現地を訪れた多くの方々は、実際に見つかった中世の館跡(堀跡や井戸跡)や平安時代の畑跡、堀跡のクロップマークが映った航空写真や調査中の写真パネルの展示、土器、陶磁器、漆器椀、下駄、茶臼、銭などの出土品見学などを通して、熱心に遺跡と向き合っておられました。

特別史跡多賀城跡を彩るアヤメ
特別史跡多賀城跡を彩るアヤメ
現地説明会の様子(平成28年6月4日)
現地説明会の様子(平成28年6月4日)

 現地説明会後は梅雨空が続き、雨水と湧水に悩まされ、排水作業を繰り返しながら調査を進める日々でした。そんななか、調査終了の間際となって、館跡の中央では複雑な木枠をもつ古代の井戸跡、館跡の北東側では西から南へ折れ曲がる堀跡、館跡の北西側では平安時代の畑跡を区画する東西または南北の溝跡が見つかるなど、新たな成果があがりました。


館の北側で見つかった堀跡
館の北側で見つかった堀跡
複雑な枠をもつ古代の井戸跡
複雑な木枠をもつ古代の井戸跡

 内館館跡の調査では、中世の土器、陶磁器、漆器椀、下駄、茶臼、銭などの多種多様な遺物が見つかりました。これらの出土品の一部は、多賀城市埋蔵文化財調査センター(多賀城市中央2丁目 多賀城市文化センター内)で開催中の速報展「発掘された遺跡−平成27年度の調査成果−」で観覧いただけます。この速報展では、内館館跡、特別史跡多賀城跡、高崎〈たかさき〉遺跡、八幡沖〈やわたおき〉遺跡、新田〈にいだ〉遺跡、山王〈さんのう〉遺跡など、昨年度に市内で調査された遺跡の出土品が展示されており、遺跡や遺物の見所が分かりやすく丁寧に解説されています。9月11日(土)まで開催されていますので、近くにお越しの際はぜひとも御観覧ください。
 内館館跡の発掘調査は、慣れない土地で初めて経験した復興調査でしたが、発掘現場には緊張感が漂いつつも、いつも笑顔があり、とても和やかな雰囲気に包まれたなかで調査することができました。発掘作業員さんのなかには、以前の復興調査で岡山県から派遣された職員とともに調査に携わられた方もおられ、復興を通じた御縁もありました。調査を支えてくださった発掘作業員の皆さん、たいへんお世話になりました。


速報展 発掘された遺跡
速報展 発掘された遺跡
皆さん、ありがとうございました
皆さん、ありがとうございました


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