東日本大震災から6年目を迎えた春                   

文/宮城県教育委員会 米田 克彦

   

 桜前線が遅く訪れた東北でも桜が散り、新緑が芽吹いてきました。
 東日本大震災から5年。被災地である宮城県・岩手県・福島県では、震災復興事業に伴う埋蔵文化財発掘調査が今もなお続いており、こうした調査を支援する専門職員の派遣も5年目を迎えました。平成28年度上半期は、宮城県13名、岩手県7名、福島県8名の計28名(昨年度は3県で計52名)の専門職員が全国各地から派遣されています。
 今年度、宮城県教育委員会へは山形県・群馬県・新潟県・兵庫県・岡山県から計5名の職員が派遣されていますが、昨年度は計12名であったことに比べると、宮城県内では高速道路や県道、JR建設などに関わる大規模な調査がほぼ完了したこともあって、その規模は小さくなったと言えます。ただ、被災沿岸部の市町では市町道の建設、ほ場整備、漁業関連、被災建物の再建などに関わる復興事業が未だに多く、これらの事業に伴う埋蔵文化財の調査も立て込んでいるのが実情です。そうしたなかにあって、平成25・26年度に復興事業に伴って調査された山王遺跡(第3・7回の便り)の地点では調査後に急ピッチで工事が進み、平成28年3月27日に三陸沿岸道路の4車線化及び多賀城インターチェンジが開通するなど、地域が復興していく様子が見えるようにもなってきました。

4車線化された三陸沿岸道路(山王遺跡)
4車線化された三陸沿岸道路
(山王遺跡)
多賀城インターチェンジ(山王遺跡)
多賀城インターチェンジ(山王遺跡)
   

 今年度新たに派遣された私は、宮城県東部中央に位置する多賀城市で、内館館跡〈うちだてたてあと〉の発掘調査を4月から担当しています。この調査は多賀城市教育委員会が主体として行われており、宮城県教育委員会も調査に協力しています。調査員は多賀城市3名(うち2名は東京都府中市・神奈川県からの派遣)、宮城県6名(うち2名は兵庫県・岡山県からの派遣)の計9名という通常では考えられない組み合わせで、地元の作業員さんたちとともに日々奮闘しています。
 内館館跡は特別史跡多賀城跡と東北新幹線沿いのJR東日本新幹線総合車両センターとの間にある広大な田んぼの中央に位置します。調査はほ場整備事業に伴うもので、平成27年10月から行っています。この遺跡は地表面に浮かび上がるクロップマークをもとに、調査前から複数の溝跡に囲まれた中世の館跡の存在が把握されていました。クロップマークとは、地中に残る遺構部分の埋まった土が周りの地面よりも軟らかいことを受けて、土に含まれる水の量の違いが植物の生育に影響を与えた結果、遺構の痕跡が地表面に浮かび上がる現象のことを言います。調査では事業地内に残る遺跡の範囲を確認したうえで、埋蔵文化財に影響を与える部分について発掘調査を行っています。そのため、限られた範囲での調査ですが、次第に館跡や周辺の様子が分かってきました。調査は6月頃まで続きますので、今後の調査の進展に御期待ください。


内館館跡の調査地遠景
内館館跡の調査地遠景
内館館跡の北側周辺の調査風景
内館館跡の北側周辺の調査風景

 年度は始まったばかり。西日本とは異なる不慣れな東北の大地で、被災地の復興とさらなる発展に向けて、宮城県職員や作業員さん、各地からの派遣職員とともに文化財保護を通じて貢献できるように努めていきたいと思います。




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