宮城県における震災復興事業に伴う埋蔵文化財発掘調査について(第1回)                   

文/宮城県教育庁文化財保護課 技術補佐 天野 順陽

   



1.ご挨拶(御礼)
 平成23年3月11日に東日本大震災が発生してから早いもので4年が経過しました。震災発生以降、被災地には岡山県をはじめ全国から激励や埋蔵文化財専門職員の派遣など多大な支援をいただいております。お陰様で少しずつではありますが、復興が実感できるようになってまいりました。この場をお借りし、改めて感謝申し上げます。
 このたび、岡山県古代吉備文化財センターのご配慮により、センターのHPで「東日本大震災復興事業に伴う埋蔵文化財発掘調査(以下、復興調査)」の現状を報告する機会を与えていただきました。センターのHPには「東北の大地からの便り」というコーナーが設けられていて、岡山県から宮城県に派遣いただいた大橋雅也さん(平成24年度)、岡本泰典さん(平成25〜26年度)が宮城県で行われている復興調査の様子等について報告しています。ご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、派遣職員の視点から様々な情報を発信いただき、大変うれしく思っております。今回、貴重なスペースをいただきましたので、皆様に少しでも復興に向けた取組について理解を深めていただけるよう、宮城県からも復興調査の様子等をお伝えしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 今年度は、これまでの取組や復興調査の成果、今後の見通しなどを3〜4回に分けて、個人的な感想も含めながらお伝えしたいと思います。専門用語など難しい言葉は使わないで表現するよう努めます。もし、わかりにくい点等があれば遠慮なくご指摘下さい。
 第1回目の今回は、正直なところ、どこから書いたらよいのか悩みましたが、まず全国からの支援状況や復興調査の進み方等について概要をお話ししたいと思います。

2.全国からの支援(感謝)
 高速道路・JR常磐線移設予定地や沿岸市町の復興事業計画地内には多くの遺跡が含まれていました。私達はなんとか調査を回避できるよう事業者と調整しましたが、どうしても避けられず、発掘調査が必要な部分が出てきました。通常は宮城県や市町の教育委員会が発掘調査を行いますが、震災後は調査対象となる遺跡数が急増し、宮城県内の職員だけで対応するのは困難と思われたため、文化庁を通じて全国に埋蔵文化財専門職員の派遣を要請いたしました。
 お陰様で平成24年度以降、多くの県市から応援をいただいており、今年度は宮城県に12名、沿岸市町に10名の計22名が派遣されています(図1・2)。岡山県からは大橋雅也さん(平成24年度)、岡本泰典さん(平成25〜26年度)、杉山一雄さん(平成27年度)を派遣していただき大変助かりました。お忙しい中、貴重な戦力を派遣していただいた岡山県の皆様に感謝いたします。派遣職員のご活躍は次回にご紹介したいと思います。

調査体制の強化

調査体制の強化

3.宮城県の震災復興計画と国の集中復興期間について
 宮城県では、震災発生の翌年度にあたる平成23年度から平成32年までの10年間で復興を完了させることを目差し、震災復興計画を立てて事業を進めています。計画は復旧期(平成23〜25年度)、再生期((平成26〜29年度)、発展期(平成30〜32年度)の3期に分けられ、今年度は計画のほぼ中間地点にあたる再生期の2年目となります(図3)。
 また、国も復興期間を10年間と定めています。そのうち前半の平成23〜27年度までの5年間を「集中復興期間」と位置づけ、100%国負担の復興交付金により迅速に復興事業(街作り事業)を進める施策をとっています(図3)。
 最近の報道にもありますが、今年度で「集中復興期間」が終了し、その後の平成28〜32年度までの5年間は「復興・創生期間」となることが復興庁から発表されました。名前が「集中復興期間」から「復興・創生期間」に変わるだけならいいのですが、事業によっては事業費の一部(1〜3%程度と報道されています)を地元の県や市町が負担する可能性が出てきたのが心配です。事業費が大きいので仮に1〜2%負担としても相当な地元負担となり、結果的に復興事業に遅れが生じることが懸念されます。6月末までには国の方針が決まると思いますが、復興事業や私たちが行う調査に影響が出ないことを願っています。


復興調査の進捗状況

4.復興事業の種類と復興調査の進み方
 復興事業は次の@〜Dに大別されます。調査対象遺跡は約300遺跡です(図5・7)。ただし、すべてが本格的な発掘調査になるとは限りません。事業者との調整の結果、調査が不要になったり、簡単な調査で終了する場合もあります。
   @ 【高速・JR建設】 三陸沿岸道路・常磐自動車道・JR常磐線建設(図5・6)
   A 【住宅整備】 高台移転のための土地区画整理事業(図7・8)
   B 【県・市道建設】 集落を結ぶ県・市道の建設。堤防機能をもつ道路もあり
   C 【生産基盤整備】 ほ場整備事業
   D 【住宅等再建】 被災した個人住宅や工場等の再建
 復興調査の進み具合は、@Aがほぼ終了、BCが今後本格化、Dは今後も昨年度と同数程度の調査が継続していく、という状況です。重要交通路・住宅の整備から生活・生産域の整備に事業の中心が移っているのがわかります(図4)。印象としては、まだまだ復興調査は続きますが、@Aの大規模調査がほぼ終了したため、ピーク(今思えば心配していたドッカーンというピークではありませんでした)は過ぎたと思います。また、これから本格化するBCの事業については、上述のように事業費の一部を地元が負担する可能性があるので、それが事業や調査の遅れにつながらないことを切に願っています。

復興調査の進捗状況

復興調査の進捗状況

復興調査の進捗状況

復興調査の進捗状況

復興調査の進捗状況

5.次回は・・・
 1回目は少し固い話から入ってしまいましたが、次回以降は、昨年度から冬期間も休まず調査している羽黒下〈はぐろした〉遺跡(石巻市)や合戦原〈かっせんはら〉遺跡(山元町)の発掘調査状況などをお知らせしたいと思います。
 なお、復興調査の様子や現地説明会資料等は当課HPでご覧いただけますのでアクセスしてみてください(若干更新が遅れている部分もあり、冷や汗ものですが・・・)。
 ◆宮城県教育庁文化財保護課HP  http://www.pref.miyagi.jp/soshiki/bunkazai/



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