平成24年度 埋蔵文化財のための復興支援はじまる

                   

文/岡山県古代吉備文化財センター 大橋 雅也

   



 岡山県では、平成23年3月11日の東日本大震災で甚大な被害を受けた東北3県の復旧、復興支援のために様々な部署で職員派遣を行っています。

 埋蔵文化財保護関係についても、宮城県教育庁文化財保護課へ1名の埋蔵文化財専門職員が派遣され、震災復興事業に伴う遺跡の発掘調査にあたっています。これは、復旧復興事業の円滑な水深と埋蔵文化財の適切な保護との整合を図るための文化庁、被災3県、および他の都道府県、政令指定都市をはじめとした全国的な協力体制の一環です。このような取り組みは平成7年阪神大震災のおりにも実施され、岡山県からも兵庫県へ3年間にわたり毎年職員1名を派遣していました。

 そして今回の大震災を受け、埋蔵文化財保護のための復興支援として平成24年4月から岩手県に10名、宮城県9名、福島県に1名の計20名の専門職員が全国の都道府県・政令指定都市から派遣され、10月からは宮城県17名、福島県5名に増員され、総計32名が支援職員として各県で業務に従事しています。また、今後少なくとも5か年にわたり3県へ70名余の埋蔵文化財専門職員派遣が行われる見込みです。

宮城県の復興ロゴ
宮城県の復興ロゴ 
福島県の復興ロゴ
福島県の復興ロゴ
岩手県のキャラクター
岩手県のキャラクター“わんこきょうだい”

 現在、被災3県では、@事業計画地を遺跡から外す事前調整A盛土保存など弾力的な遺跡の取り扱いB全国からの専門職員派遣によるマンパワーの拡充C最新デジタル技術活用による調査期間の短縮 を主な柱として埋蔵文化財を保護しつつ、復興事業を円滑に進めるために全力で取り組んでいます。

 岡山県から宮城県に派遣された筆者は、4月から12月まで県南部亘理郡山元町〈わたりぐんやまもとちょう〉において、復興アクセス道路として早期開通が期待される常磐自動車道建設に伴い、宮城県職員と神奈川県から派遣された職員の方とともに計8遺跡の発掘調査を担当しました。これらは、主に奈良から平安時代の製鉄関連遺跡とそれを支えたと推測される集落遺跡の調査となりました。特に製鉄遺跡は宮城県内でも調査例が少なく、この時代に中央政権による東北支配のために欠かせない鉄作りが県南部で行われていた実態を解明する貴重な成果を挙げることができました。また1月には県北部石巻市雄勝町〈いしのまきしおがつちょう〉において防災集団移転事業に先立って、沿岸部の縄文時代の貝塚隣接地の試掘調査もおこないました。

製鉄炉跡
製鉄炉の調査
(山元町上宮前北〈かみみやまえきた〉遺跡)
試掘調査
貝塚隣接地の試掘調査
(石巻市雄勝町立浜〈たつはま〉貝塚)

 今、何よりも求められるのは単なるモノの復旧復興ではなく、そこで暮らすことのできる地域の創出です。そのためにも全国から被災地へ多数の専門職員が集まり、地元の専門職員に協力し、やむなく壊される埋蔵文化財を迅速に記録として残し、そこから描写される地域像を余すことなく伝えていかなければなりません。東北の地でこれまで受け継がれ、守られてきた歴史と文化遺産を途絶えることなく希望ある将来へと継承することが、この地ふるさとの本当の再生。復興につながるのではないでしょうか。

 この復興支援事業について、派遣された職員からの便りを今後もセンターホームページで発信していきます。現在の東北の状況について、そして遺跡の発掘調査の様子について関心をもって、これからも引き続き被災地の復興を応援していただければと思います。

 

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