第3回   英雄の墓−坂田墳墓群〈さかたふんぼぐん〉−

 滝川を見下ろす小矢田の丘の上で、弥生時代中期にはじまる集落跡が発掘されました。40軒見つかった住居跡はいずれも半地下式の竪穴住居〈たてあなじゅうきょ〉で、古墳時代後期に至る数百年の間、断続的に営まれたものです。
 この集落跡を見渡せる丘の頂きには、そこに暮らした人々の墓が設けられています。長さ約2m、幅80pほどの長方形をした墓穴の中に、板を箱形に組んで遺体を納めた木棺墓〈もっかんぼ〉で、ひときわ大きい墓穴からは、この墓地で唯一の副葬品が出土しました。
 それは粘板岩〈ねんばんがん〉という黒っぽい石を磨いて作った長さ14pの短剣です。金属製の剣をまねたもので、敵を倒す武器として、あるいは悪霊を払う祭器として用いられたようです。
 それでは、この短剣を携えて葬られたのは一体どのような人物だったのでしょうか。村を外敵から護った戦士か、あるいはまじないの力で村人を導いた司祭か。いずれにしても、磨製石剣〈ませいせっけん〉という稀少な品とともに葬られたこの人物が、村の中で重要な地位を占めていたことは間違いないでしょう。
 2,000年もの時を経て、山野の姿は大きく変わりましたが、墓の主は今もこの地に住む人々の行く末を見守り続けているのかも知れません。
磨製石剣磨製石剣が出土したお墓
木棺墓跡(右)と磨製石剣(左) 

*『広報しょうおう』2011.8月号掲載記事を一部改変して転載


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