第22回 いのちのリレー-鍛冶屋逧古墳群〈かじやざここふんぐん〉−

 中国道に面した美作市上相〈かみや〉の丘の斜面で、ヒノキの木立に隠れるように埋もれていた小さな古墳が見つかりました。周りに弧状の溝を掘ってその土を盛り上げた墳丘は、直径10m、高さ2mほどあります。中央のくぼみには石室の壁がのぞき、あたりには陶棺〈とうかん〉(焼き物のひつぎ)のかけらが散らばっていました。
 横穴式石室と呼ばれるこの墓は、繰り返し埋葬が行なえることから家族墓として使用され、比較的少ない労力で築造できることもあって、6世紀後半から盛んにつくられました。
 けれども、この墓へ埋葬を行なうたびに、人々は凄惨〈せいさん〉な光景を目にすることになります。「膿〈うみ〉わき、蛆〈うじ〉たかる」遺体。亡き妻イザナミを慕って黄泉〈よみ〉の国を訪れたイザナギが目にしたという神話の一場面です。驚いて逃げ出したイザナギは、追ってくるイザナミに向かって絶縁を宣言しました(横穴式石室の入口でしばしば見つかる土器は、死者へ決別を告げる儀式に用いられたという説があります)。このときイザナギは、死者の数を上回る命の誕生を予告します。こうして日本人は永遠に増え続けるはずでした。
 しかし、人口が減少に転じた今日、神話の時代から幾世代にわたって受け継がれてきた命のリレーが途絶えることのないよう願わずにはいられません。
陶棺を納めた横穴式石室
陶棺〈とうかん〉を納めた横穴式石室

*『広報しょうおう』2013.2月号掲載記事を一部改変して転載


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