連載第11回 土への挑戦           

文/岡山県古代吉備文化財センター 金田 善敬

   



 人間が生活を営むにあたって、土を掘るという行為は避けて通れません。家をつくるにしても、田畑を耕すにしても、造成・掘削は不可欠なので、掘るのに適した道具を得ることは、昔の人々にとって重大な関心事であったに違いありません。
 

 縄文時代から弥生時代ぐらいまで、人々は石や木を利用した道具で土を掘っていたと考えられています。ところが、弥生時代後期になると鉄の刃先が普及しはじめました。岡山市北区津島遺跡(鍬〈くわ〉:図1)や倉敷市上東遺跡(鋤先〈すきさき〉)で、鉄刃を装着したと考えられる木製品が出土しています。しかし、このころの鉄刃は長方形の鉄板の両端を折り曲げただけのもの(方形板刃先〈ほうけいいたばさき〉)で、ちょっと弱々しい感じがします。


方形板刃先と鍬身
図1 方形板刃先と鍬身

 ところが、古墳時代中期になると、装着部分をU字形に加工した鉄の刃先(U字形刃先)が出現します(図2)。このU字部分に溝を加工し、ここに木部を装着することで、振り下ろした力を効率よく刃先につたえることができます。これにより、掘削能力は格段に向上したと考えられます。


U字形鍬・鋤先と鍬身
図2 U字形鍬・鋤先と鍬身

 これに関連して、鍬を振り下ろした時に、力を鍬身に伝える柄(反柄〈そりえ〉)について見てみましょう(図3)。方形板刃先が使用されていた弥生時代後期に、津島遺跡で使用されていた柄は長さ1〜1.2mと長いものですが、太さは径3pほどしかありませんでした。それに対し、古墳時代中期から後期にかけて岡山市中区百間川原尾島遺跡で使用されていた柄は、U字形刃先を装着したものですが、長さ約78pと短いにもかかわらず、太さは径4pもありました。これは現代に例えると、市販されているスコップやツルハシの柄の太さに相当します。このことから、1,500年も昔の古墳時代中期には、現代と同じく鉄刃を利用し、かつ、人力で地面を掘削するには十分な機能をもちあわせた道具がすでに完成していたことを示しています。


鍬柄の比較
図3 鍬柄の比較

 古墳時代には、人力だけではなく畜力を利用する道具も出現していることから、近世までに見られる掘削道具の原型はすでに古墳時代に出来上がっていたといえるでしょう。その後、近・現代にいたっては機械を利用することで、私たちは少ない人数でも大規模な掘削を行うことができるようになりました。

 このように、石製品や木製品から鉄製品を利用した掘削、さらに人力から畜力、機械を利用した掘削と、人類の掘削能力の向上は、自然と人間の関係に大きな影響を与えてきたのです。

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