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 このコーナーでは、中世城館跡総合調査を担当している調査員からのホットな情報をお届けします。 この便りを通して、調査の様子を感じ取っていただき、興味・関心を深めていただければと思います。

<平成30年度>

 第33号

肝心要の登城ルート地図

 第31号でも紹介したとおり、私たちは現地調査に先立ち、目的の山城の情報収集を行います。その情報を基に踏査を実施し縄張り図を作成するのですが、なるべく短時間で山城に到達し、踏査と縄張り図作成時間を長〜く確保したい。そのためには、やはり事前準備として登城ルート地図を作成することが重要です。  
 登城ルート地図の作り方は、まず県HPの「おかやま全県統合型GIS」の掲載マップから「文化財情報」「埋蔵文化財(遺跡)」を開いて目的の山城を探します。山城が見つかったら、縮尺を1/10,000〜1/25,000ぐらいにして印刷し、それに番地・駐車地点・ランドマーク・道順などの情報を手書きしてできあがりです。これらを調べるにはインターネット上の地図が役立ちます。空中写真で道路の有無を確認できますし、カーナビに入力するために必要な周辺の番地を調べることもできます。ランドマークは神社仏閣公共機関などがありますが、特に高圧線や携帯基地局の鉄塔があればラッキー!近くに山道があることが多いので、山城への接近が楽になります。
 さて、準備万端整いました。いよいよ登城ルート地図を持って登城開始です。地図のとおりであればこれで目指す山城はすぐそこのはずなのですが、ほとんどの場合山城直前で道はなくなってしまいます。そこからは道なき道を進むしかありません。登城ルート地図はあくまでも机上の計画なので、最終的にどこを登るかは山を見て判断します。それゆえ、いつも楽に到達できるとは限りません。谷から登って藪の中に突入して茨に囲まれてルートを変更したり、最短距離を登って急傾斜に息も絶え絶えになる経験をしました。当時山城を攻撃・防衛した武将の気持ちが体感できます。
 登城ルート地図を綿密に作成し、それを使って実際に登城することで、築城当時の登城・攻城ルートに思いをはせることができ、その山城に対する考察が深まると思うのは私だけでしょうか。(U)         

加葉山城登城ルート地図
加葉山〈かばやま〉城(高梁市中井町津々)の登城ルート地図
赤線が実際の登城ルート。青線は通らなかった。
南から見た加葉山城
南から見た加葉山城
黄色矢印下に城がある。赤矢印は実際に登城したルート

 第32号

平成29年度の調査成果と平成30年度の調査開始

 山城の調査が始まって5年目にあたる平成29年度は、津山市・鏡野町・総社市・矢掛町の2市2町に所在する245か所の城館跡(伝承地を含む)を調査しました。現地踏査の日数は実に110日。またこの地域には規模の大きな城が多く、体力的にも非常に厳しい日々でした。しかし行く先々で、地元の皆さまに暖かく迎えていただき、なんとか調査を無事に終えることができました。ありがとうございました。
 今回は、平成29年度の調査の中で特に感動した城館跡をご紹介します。

・岩屋城跡と付城群(津山市・真庭市) 
 県指定史跡として著名な山城。この城を攻囲した時の付城群が全周する。

・矢筈城跡(津山市)           
 標高約700m。高い山の上にあり、2つの曲輪群を有する大規模な山城。

・爪ヶ城跡(津山市)            
 標高約1,100m。岡山県でもっとも高い位置にある山城。

・医王山城跡(津山市)          
 毛利氏対宇喜多氏の戦いの舞台。1年以上にわたって毛利方が籠城した山城。

・荒神山城跡(津山市)          
 桝形状の虎口や折れのある土塁。戦上手の花房職秀が築いた山城。

・神楽尾城跡(津山市)          
  360°の眺望で、津山市内を見渡せる山城。

・桝形城跡(鏡野町・津山市)      
 山頂に築かれた曲輪を囲む土塁が特徴的な山城。

・葛下城跡(鏡野町)           
 約700mにわたって曲輪が連なる大型の山城。

・沖構跡(鏡野町)             
 かつての堀の区画が残る平地城館。

・猿掛城跡(矢掛町・倉敷市)      
  庄氏・毛利氏が地域支配の拠点とした山城。

・茶臼山城跡(矢掛町)          
 大きな曲輪が連なる城で、毛利氏が猿掛城から移って拠点とした。

・幸山城跡(総社市)            
 山腹から突き出た岩盤上にあり、山陽道を広い範囲で見渡せる山城。

・荒平山城跡(総社市)          
 高梁川の屈曲部分付近に築かれた『備中兵乱記』に登場する山城。

         

津山市岩屋城跡の主郭 津山市矢筈城跡の石垣
津山市岩屋城跡の主郭 津山市矢筈城跡の石垣
津山市荒神山城跡の折れのある土塁 総社市幸山城跡から見た眺望
津山市荒神山城跡の折れのある土塁 総社市幸山城跡から見た眺望

 さて、平成30年度は、新見市・高梁市・倉敷市・浅口市・早島町の城館跡を調査します。また新たな城と地元の皆さんとの出会いを楽しみに頑張りたいと思います。今年度の担当は、山城調査3年目に突入するKと、新たに頼もしい調査員UとWの2名を加えて行います。どうぞよろしくお願いします。(K)